買い物帰り、少し時間があったので前から気になっていたコーヒー豆屋さんへ寄ってみた。
『常盤珈琲焙煎所』というお店。
埼玉と東京を中心に何店舗かあるらしい。
店内はコーヒーのいい香りがふわっと漂っていて、それだけで「今日は寄って正解だったな」と思える空間だった。
私のコーヒーの好みはわりと分かりやすい。
深煎り。苦め。酸味少なめ。
コーヒーに詳しいわけではないけれど、「これぞコーヒー」というどっしりした味が好きだ。
店内の説明書きを見ながら豆を選ぶ。今日はマンデリンにして、挽い方はペーパードリップ用に中挽きでお願いした。
コーヒー豆屋さんって面白い。
スーパーで豆を買うのとはちょっと違う。
「豆を選ぶ」というより、「今日からしばらく一緒に過ごす相棒を選ぶ」みたいな感覚がある。
豆が並んでいるだけなのに、
エチオピア、ブラジル、コロンビア、グアテマラ…。
名前を見ているだけで世界旅行をしている気分になる。
そして、
「マンデリンください。」
と言うだけで、なんとなく玄人っぽく見える気がしている。
このお店で一番うれしかったサービス。
豆を買うとコーヒーを一杯サービスしてくれる。
これがまたちょうどいい。
焙煎し終わるまでの待ち時間にアイスコーヒーをいただきながら、
コーヒーの香りにつつまれながら店内でぼーっと過ごす。
何か特別なことをしているわけではない。
スマホもほとんど見ない。
ただコーヒーを飲んでいるだけ。
それなのに、不思議なくらい時間の流れがゆっくりになる。
大人になると「待ち時間」はできれば短い方がいいと思ってしまう。
レジも。
信号も。
「早く、早く~!!」
そんなことを思ってしまう。
でも、この待ち時間は
「どうぞ、ゆっくりやってください」
なんて思ってしまった。
そして、そしてそんな待ち時間にヒゲメガネと一緒に一枚。
そんな小さな思い出の記憶を、今日も一枚残しておいた。

家に帰ると、紙袋からほのかにコーヒーの香りがする。
まだ飲んでいないのに、もう少し幸せな気分。
高価な買い物をしたわけでもない。
旅行へ行ったわけでもない。
ただコーヒー豆を買っただけ。
でも、こういう「ちょっとだけ生活が豊かになる出来事」って意外と記憶に残る。
毎日が劇的に変わることは少ないけれど、
お気に入りのコーヒー豆を見つけたり、
気持ちのいいお店に出会ったり、
店員さんと少し話したり。
そんな小さな出来事が積み重なって、一日が少しだけ機嫌よく終わる。
たぶん幸せって、大きなイベントよりもこういうところに隠れているんだと思う。
さて、明日の朝はマンデリンを淹れて一日を始めよう。
コーヒーの湯気を見ながら知ったような顔をして
「うん、自分好みの味で、苦くておいしい。」
と言いながら、一日を始めるのである。
そして、今日もヒゲをととのえる。






































