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雨の日は、世界が少し静かになる

今日は一日中雨。

雨の日は基本的に好きだ。

もちろん洗濯物は乾かないし、自転車は乗りづらいし、出かけるのも少し面倒になる。

それでも雨の日が好きなのは、世界全体の音量が少し下がるような気がするからだ。

窓の外では木々が風に揺れながら雨に打たれている。

葉っぱに当たる雨音。

遠くを走る車のタイヤが水を切る音。

時々吹く風の音。

どれも派手ではないけれど、なぜか心地いい。

晴れの日は世界が「見て見て」と話しかけてくる感じがする。

青空だったり、まぶしい光だったり、楽しそうな人たちだったり。

一方で雨の日はあまり自己主張をしない。

「まあ、そんなに急がなくてもいいんじゃない?」

そんなふうに言われているような気がする。

今日は外に出かける用事がある。

普段なら近場は自転車で移動する。

自転車は便利だ。

ちょうどいい移動手段。

しかし今日はレインコートに傘をさして歩いて出かける。

歩くのは嫌いじゃない。

歩いていると普段見えないものが見える。

小さな花が咲いていたり。

誰かの庭の植木がきれいに手入れされていたり。

古い喫茶店がまだ営業していることに気づいたり。

自転車だと景色は流れていく。

歩くと景色の方から近づいてくる。

そんな気がする。

そういえば子どもの頃から雨の日が好きだった。

理由は思い出さないけど、ただウキウキしていた。

学校の帰り道、わざと水たまりに飛び込んだんりした。

大人になると不思議なもので、水たまりを避ける技術ばかり向上する。

しかし心のどこかには、まだ水たまりに飛び込みたい子どもが住んでいる気もする。

いい年齢になって水たまりへ全力ジャンプしたら、たぶん周囲の人に心配されるのでやらないけど。

気持ちだけは少し残しておきたい。

雨の日は空を見上げても青空は見えない。

でも、その代わりに地面を見る。

濡れたアスファルト。

傘に落ちる雨粒。

水面に広がる波紋。

晴れの日には見逃している景色がそこにある。

世の中には晴れの日にしかできないこともあるけれど、雨の日だからできることもあるのだと思う。

今日は雨。

少しだけ足取りはゆっくりになる。

少しだけ考えごとも増える。

でもそれでいい。

雨の日くらいは世界のスピードに合わせるのをやめて、雨の日なりのスピードで過ごしてみようと思う。

たぶん、その方が景色もよく見える。

雨の日は、世界が少し静かになる。

そして、今日はメガネを拭こう。

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