ヒゲとメガネのネクタイピンを買った。
メガネのネクタイピンはたまに見かける。
でも、ヒゲ付きはなかなか見つからない。
ネットで見つけた瞬間、
「あっ、これだ。」
と、ほぼ反射的にポチってしまった。
大人になると、こういう「見つけた!」という小さな喜びは意外と貴重だ。
子どもの頃なら、新しいゲームでも、おもちゃでも、ワクワクすることが結構あった。
今はそういう機会が減った分、
ヒゲ付きネクタイピンひとつで少しテンションが上がる自分を、わりと気に入っている。
よく見ると、このネクタイピンは面白い。
メガネだけでも成立しているのに、
その下にちょこんとヒゲがあるだけで、一気に人格が生まれる。
「ただのメガネ」が、
「きっとコーヒーが好きそうなおじさん」みたいになる。
たぶんヒゲには、人を親しみやすく見せる何かがある。
…いや、僕がそう思いたいだけかもしれない。
先日、仕事の関係でビジネス交流会のような集まりに参加した。
こういう場所へ行くたびに思う。
みなさん、本当に自己紹介がお上手だ。
「○○をしております。」
「△△の課題を解決しています。」
「□□をプロデュースしています。」
次から次へと、自分の仕事や強みを自然に話している。
あれは才能だと思う。
僕はというと、
「えーっと……個人事業主です。」
で終わってしまう。
決して仕事が嫌いなわけではない。
ただ、自分のことを売り込むのが昔から少し苦手なのだ。
スーパーの試食販売のおばちゃんが
「おいしいから食べてみて!」
と言ってくれる分には平気なのに、
自分自身を試食販売するとなると急に口が重くなる。
「この人、おすすめですよ。」
と誰か代わりに言ってくれたらいいのになぁ、なんて思う。
そんなことを考えていたら、このネクタイピンは意外と優秀なんじゃないかと思えてきた。
相手が
「そのネクタイピン、珍しいですね。」
とか言ってくれたら、
「実はヒゲメガネブログをやってまして…」
という流れができる。
仕事の話より先に、ヒゲが自己紹介をしてくれる。
これはありがたい。
名刺は肩書きを伝えるものだけれど、
こういう小物は、その人らしさを伝えてくれる。
履き込んだ革靴だったり、
使い込まれた万年筆だったり、
ちょっと変わった腕時計だったり。
そういうものを見ると、
「あ、この人こういう人なんだろうな。」
と勝手に想像してしまう。
人は案外、言葉だけでなく持ち物でも会話しているのかもしれない。
それにしても、不思議だ。
ヒゲとメガネを組み合わせるだけで、なんだか少し笑ってしまう。
たぶん真面目すぎないからだ。
少しだけユーモアがある。
少しだけ力が抜ける。
僕はそういう「少しだけ」が好きだ。
人生も、仕事も、肩に力が入りっぱなしでは疲れてしまう。
だからネクタイぐらいはヒゲをぶら下げていてもいい。
そのくらいの余白があるほうがきっと毎日は楽しい。
次の交流会では、このネクタイピンをつけて行こうと思う。
一人でも
「それ、いいですね。」
と笑ってくれる人がいたら大成功だ。
名刺交換より先に笑顔が生まれたら、
その日はもう十分にいい日になるだろう。
そして、その笑顔のきっかけが一本のヒゲだったなら、
ヒゲも案外、世の中の役に立っているのかもしれない。
そして、今日もヒゲをととのえる。

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