今日は仕事の打ち合わせで都心まで出かけた。
予定していたより少し早く終わったので、
「このまま帰るのも、なんだかもったいないな。」
そう思って、少しだけ遠回りをして東京タワーまで歩いてみた。
JR浜松町駅からのんびり歩く。
東京の街は来るたびに少しずつ景色が変わっている。
新しいビルが建って、知らないお店ができて、昔あった建物がいつの間にかなくなっている。
歩きながら「あれ?ここって前は何があったっけ?」なんて考えることも多い。
そんな街の中で、東京タワーだけは昔と変わらない顔で立っている。
ビルの隙間から赤い鉄骨が少し見えた瞬間、
「ああ、いたいた。」
思わずそんな気持ちになった。
待ち合わせをしていたわけでもないのに、久しぶりの友達を見つけたような安心感がある。
最近はスカイツリーのほうが人気なのかもしれない。
もちろん高さではかなわないし、展望台だって立派だ。
でも僕は、東京タワーのほうが好きだ。
近くまで行くと、鉄骨は思っている以上に太くてゴツゴツしている。
オレンジとも赤とも言えない絶妙な色も、晴れの日と曇りの日では少し違って見える。
巨大な建造物というより、職人さんたちが一本一本組み上げた大きな作品。
そんな温度を感じる。
考えてみると、人にはそれぞれ「お気に入りの場所」がある。
特別な観光地じゃなくてもいい。
いつもの公園。
近所の喫茶店。
お気に入りの本屋さん。
川沿いの遊歩道。
そこへ行くと、景色はいつもと変わらないのに、自分の気持ちだけが少し整っていく。
不思議なもので、場所は変わらなくても、毎回違う自分がそこにいる。
元気な日もあれば、ちょっと疲れている日もある。
だから同じ景色なのに、毎回少し違って見える。
お気に入りの場所は、心の鏡みたいなものなのかもしれない。
たまには目的もなく寄り道するのも悪くない。
効率だけを考えれば、まっすぐ家へ帰るのが正解なんだろう。
でも人生って、寄り道のほうが記憶に残っていたりする。
今日も朝の時点では、「東京タワーへ行こう」なんて予定はまったくなかった。
それなのに少し遠回りしただけで、なんだか得をした気分になった。
帰り道は、特別なことがあったわけでもない。
ただ少しだけ足取りが軽かった。
きっと東京タワーが、
「また来なよ。」
と言ってくれた気がしたからだ。
……いや、そんなことは言ってないか。
でも、そういうことにしておく。
そのほうが、今日という一日が少しだけ楽しくなる気がするから。
大人になると、効率や正解ばかり探してしまう。
だからこそ、こういう小さな勘違いは、案外悪くない。
今日も東京タワーは、何も変わらずそこに立っていた。
変わったのは、少しだけ軽くなった僕の気持ちのほうだった。
また会いたくなったら、ふらっと歩いて来ようと思う。
たぶん東京タワーは今日と同じように、何も言わず、いつもの場所で待っていてくれる。
そして、今日もヒゲをととのえる。



































